
これは、ごく身近で実際に起きたロマンス詐欺の話である。
とある知人と、ゆっくり話をする機会があった。
たわいもない雑談のつもりだった。
その知人は、つい最近離婚した50代の男性。
どこにでもいる、ごく普通の中年男性だ。
しかし、その会話は思わぬ方向へ進んでいくことになる。
彼は少し嬉しそうに、こう話し始めた。
「最近、いろんな女性と交流があるんだよ」
話を聞くと、どうやらそれはリアルではなく、ネット上の話。
きっかけはTikTokだった。
「TikTokやってる?」と聞かれ、私は
「見るくらいなら」と答えた。
すると彼はこう続けた。
「すごい数のメッセージが来るから、全部返してるんだよ」
――ここで、私は違和感を覚えた。
普通なら無視する。
少なくとも、私は一度も返信したことがない。
返す意味がないからだ。
彼の話は、どこか愚痴のようでありながら、
どこか嬉しそうでもあった。
執拗に誘われるが、自分は馬鹿じゃないから断っている。
そう言いながらも、その表情は明らかに満たされている。
おそらく彼は、
「自分にはまだ需要がある」
「自分はモテている」
そう感じていたのだろう。
しかし実際には、
「お金も時間もないおじさんだ」と断るその言葉自体が、
“それでもいいなら関わってほしい”というサインになっている。
完全に、相手のペースに乗せられている状態だった。

そんな中、彼は特に仲良くしている女性の話を始めた。
その女性はこう言ったらしい。
「そんなにお金がないなら、増やし方を教えてあげる」
ここで話は一気に危険な領域に入る。
彼が「お金がない」と伝えると、女性はさらにこう言った。
「じゃあ、私がそこにプラスして投資してあげる」
――普通に考えれば、あり得ない話だ。
しかし彼は、それを好意として受け取っていた。
「自分に会いたいがために、女性がお金を出してくれる」
そんなストーリーを、完全に信じていたのだ。

私は率直にこう聞いた。
「それ、詐欺じゃないの?」
しかし、その時にはすでに――
投資は終わっていた。
彼はスマホの画面を見せてきた。
そこには、投資金額と利益らしき数字が並んでいる。
だが、そんなものはいくらでも作れる。
それでも彼は信じていた。
・税金はかからない方法がある
・相手は外国人で優しい女性
・母親の面倒を見ている真面目な人
すべてが、どこかで聞いたことのある“設定”だ。
それでも彼の中では、
信頼度100%から一切揺らがない。
私は話の内容をまとめ、AIにそのまま投げた。
返ってきた答えはシンプルだった。
「信じたい気持ちは理解できるが、100%詐欺です」
その説明をすべて読み上げると、
彼は一気に落胆した。
「高い授業料だった……」
そう呟いた。・・・つづく

正直、この話を聞くまではこう思っていた。
「ロマンス詐欺なんて、引っかかる方がおかしい」
しかし違った。
彼は特別な人ではない。
むしろ“普通”だからこそ起きた。
・離婚直後の孤独
・時間の余白
・誰かと繋がりたい欲求
・自分の価値を確認したい気持ち
この条件が揃った時、人は――
「都合のいい現実」を信じるようになる。
今回のケースは典型的だ。
SNSで接触(TikTokなど)
毎日のやり取りで信頼構築
恋愛感情・承認欲求を刺激
「あなただけ特別」という演出
投資や送金の話へ誘導
重要なのはここだ。
詐欺は「お金」から始まらない。
「感情」から始まる。
だからこそ、冷静な判断ができなくなる。
では、どうすれば防げるのか。
答えは単純だが、非常に重要だ。
「うまい話を疑う」のではなく
「なぜ自分なのかを疑う」こと。
・なぜ見ず知らずの自分に?
・なぜ無料で?
・なぜリスクを相手が負うのか?
ここに明確な答えが出ない時点で、
その話は成立していない。
ロマンス詐欺は、特別な人が引っかかるものではない。
むしろ――
普通の人ほど引っかかる。
なぜなら、
・信じる力がある
・人を疑うことに慣れていない
・感情を大切にしている
そういう人間らしさを、利用されるからだ。
今回の知人も、決して愚かだったわけではない。
ただ、“タイミング”と“心の隙間”を突かれただけだ。
もしこの記事を読んでいるあなたが、
・最近やけに親切な異性と出会った
・お金の話が絡んできている
・「自分だけ特別」と感じている
そう思ったなら、一度立ち止まってほしい。
その出会いは、本物か。
それとも――作られたものか。

恋愛は「信じること」が大切ですが、
婚活は「見極めること」がもっと大切です。
優しさと疑う力。
このバランスを持てる人が、最終的に良いご縁を掴みます。