
翌週、再びその知人と会う機会があった。
先週の話を蒸し返すつもりはなかったが、
どうしても気になってしまった。
「あの後、どうなったんですか?」
少し間を置いて、彼はこう言った。
「高い授業料だったよ……いい勉強になった」
それ以上は語らない。
こちらも深くは追及しなかった。
おそらく――
・プライドなのか
・想像以上の金額だったのか
いずれにせよ、「終わった話」にしたい空気だった。

私は軽くこう言った。
「まぁ、過ぎたことは仕方ないですよ。次いきましょう」
すると彼は、少し間を置いてこう続けた。
「実はさ……」
その一言で、空気が変わった。
話を聞いて、正直言葉を失った。
彼は、もう一件ロマンス詐欺に関わっていた。
しかも――
本人は、それを詐欺だと思っていない。
どうやら、2件同時進行だったらしい。
前回の件は「たまたま運が悪かった」
そう処理してしまったのだろう。
そしてこう思っていた。
「今度の人は違う」
今回の相手は、前回とはタイプが違った。
アパレル関係の女性。
ネットビジネスで成功しているらしい。
その女性はこう言ったという。
「私がやってる方法、教えてあげるよ」
「一緒にやれば稼げるから」
――典型的な構図だ。
いわゆる「投資・ビジネス系ロマンス詐欺」。
だが彼の中では、
・前回とは違う
・今度は現実的
・ちゃんとビジネスの話
そういう認識になっていた。

第三者から見れば、違和感しかない。
・なぜ見ず知らずの相手に教えるのか
・なぜ利益の出る方法を共有するのか
・なぜ“おじさん”にアパレルビジネスを勧めるのか
正直、成立していない。
例えるなら――
パチンコの攻略法を他人に教えるようなものだ。
そんなものが本当に存在し、広まれば、
業界そのものが崩壊する。
実際、昔は一部に“攻略法”のようなものが存在したが、
見つかればすぐに対策されて終わる。
つまり、
「継続的に儲かる裏技を他人に教える」という構造自体が矛盾している。
では、なぜ彼は気づけなかったのか。
理由はシンプルだ。
前回の失敗を取り返したかったから。
・今度こそは
・今回は違う
・この人だけは本物
そう思いたかった。
そして何より、
「誰かに必要とされている感覚」を手放せなかった。
今回も、私は一連のやり取りをまとめ、
そのままAIに投げた。
結果は変わらない。
「100%詐欺です」
むしろ、前回よりも明確だった。
その内容を一つずつ説明すると、
彼は言葉を失った。

それ以降、彼はその手の話をしなくなった。
完全に断ち切れたのか、
それとも言わなくなっただけなのか――
正直わからない。
ただ一つ変わったのは、
彼が休みなく働くようになったこと。
以前より明らかに忙しそうだ。
「最近ちょっと厳しくてさ」
そう笑っていたが、
その背景までは聞かなかった。
もしかすると――
・今回の件だけではなかったのかもしれない
・すでに大きな金額を失っているのかもしれない
そう考えると、軽々しく踏み込めなかった。
ロマンス詐欺の怖さは、ここにある。
「一度で終わらない」こと。
・手口を変えて繰り返される
・別人を装って再接触される
・被害者自身が“次こそは”と引き寄せる
つまりこれは、
**単発の詐欺ではなく“連鎖する構造”**なのだ。

今回の出来事から、はっきり言えることがある。
人は、一度騙されると弱くなる。
・判断基準がズレる
・正常性バイアスが強くなる
・「取り返したい」という心理が働く
そして気づけば、
さらに深いところまで引き込まれていく。
もし、あなたの周りに同じような人がいたら――
・強く否定しすぎない
・頭ごなしに馬鹿にしない
・しかし、事実はしっかり伝える
このバランスが重要だ。
なぜなら彼らは、
「騙されている人」ではなく
「信じたい状態にある人」だから。
婚活でも同じです。
「この人だけは違う」
そう思った時こそ、一度立ち止まること。
本当に違うのか。
それとも、そう思いたいだけなのか。
冷静な視点を持てる人が、
最終的に“本物のご縁”に辿り着きます。